ベルのタイプがひとつ。
電子音がふたつ。
あと、今日は携帯電話がふたつ。
なお、携帯電話はアラームを五つ設定してある。
すべて3分間隔で、5回のスヌーズつきだ。
ジリリリrばしん!
ぱた、ぱた…ぱし!
ピピッ、ピピピッ、ピピばしっ!
ばた、ぱしん、ばしっ!
「………言っていい?」
「…………なんでしょう……」
青筋立てて、というのは、こういうことだろうか。
快眠を妨げられることほど、頭に来ることもない。
それは、馬超もよくわかるので、何も言えない。
趙雲が眉間に皺を寄せたまま、深く、深く、ため息をついた。
その口が、息を吸い込む。
「あのね、目覚ましかけんのまではいい。 許す。 孟起だって一生懸命起きようとしてるんだっていうその志は認めよう。
けどね、目覚ましどんだけかけてると思ってんの。 ケータイ合わせて5つだよ、いつつ。
しかもケータイのアラームは5個で全部スヌーズ5回でいったい俺が何回起きたと思ってんの。 最初のプーさんのやつから最後の『ユー・レイズ・ミー・アップ』まで、俺はずーーーーっと軽く寝てはたたき起こされを続けたわけですよ」
「………はい…」
「まあいいよ。 それは百歩譲って俺と孟起が一緒に寝てるんだから仕方ない。 けどな。
なんで俺ばっかり起きて、お前は一回も起きないんだよ。
しかもなんで肝心の用事に寝坊して遅刻してるわけ。
俺の快眠は。 休日の春眠暁を覚えずは」
「……………ごめんなさい」
うん、と、小さくなってしまった馬超を前に、言うだけ言って気が済んだのか、趙雲はひとつうなずいた。
「今度はちゃんと起きなよ」
「…がんばる。 ホントごめん」
趙雲が起こす、という選択肢もあるのだが、朝は趙雲も眠いので起こすところまで頭が回らないらしい。
それに、気持ち良さそうに眠っている馬超を見ると、どうしても気持ちが挫けるのだそうだ。
というわけで、お互いの朝を気持ちよく過ごすためには、馬超が第一陣のプーさんでちゃんと起きて、他のスヌーズを止めるのが一番なのだが。
ジリリリrばしん!
ぱた、ぱた…ぱし!
ピピッ、ピピピッ、ピピばしっ!
ばた、ぱしん、ばしっ!
「……………言っていい?」
「…………………はい…………」
趙雲は、深く、深く、ため息をついた。
「ほんっとに……学習能力ないなあ!」